昭和28年03月05日 衆議院 地方行政委員会 国家地方警察本部長官 斎藤昇
「そこで日本共産党の軍事組織は、御承知のように軍事委員会によって統轄をされておるのでありますが、その組織の行動的部面を受持ちまするいわゆる中核自衛隊は、現在われわれのところにわかっておりますのは約600隊でありまして、隊員数が5500名でございます。われわれのわかっている資料によるものはさようであります。」

昭和28年09月09日 参議院 地方行政委員会 国家地方警察本部長官 斎藤昇
「只今私のほうで入手をしておりまする材料等から判断いたしまして、これらの中核自衛隊、或いは遊撃隊という大衆層組織の隊員は恐らくまあ8000から1万ぐらいであろうかと、私のほうでつかんでおりますものにつきましては、さように考えられるのであります。」

昭和27年06月10日 衆議院 行政監察特別委員会

[236]
委員長 内藤隆
今年5月7日の夜にあなたの学校で起きました事件については、先ごろ来検察庁当局の話を大体お伺いしたのですが、当委員会の事務局の調べでは、大学側と警察側との見解の対立があるようでありまするが、学長としてこの事件に関する大学側の、検察庁側と違っておるような立場の御主張をお述べ願いたいと思います。

[237]
証人(愛知大学学長) 本間喜一
5月7日の夜11時半ごろ、学生と警官2名とが衝突したことはこれは事実であります。それが、学校の入口から見れば一番奥深いところの東南端のやぶのそばで起きたことも、これも事実であります。それから学生が逃げて、しばらくして相当の学生が集まって来て、今度は警官が逃げ、1人はつかまり、その後学校の補導部長がそのつかまっておる際に出かけまして、そういうことをしてはいかぬ、早く帰せということを諭告したがために、学生はさらにその巡査を食堂につれて行って、あかりのかんかんした下において相当尋問し、つるし上げをして、謝罪文を書かせ、ピストル、手帳を取上げて帰したこと、これも大体その通りだと思います。そうしてその際に学生の方では、ある事情のためにそのやぶのそばにおいて張番をしていたということも、これも事実です。

しかしその張番した事情は、先生の住宅がちょうどそばにありまして、一棟の建物の中に約6家族ぐらいの先生が住んでおりました。そこの住宅の一部を見張っておった、こういう事情だったのであります。なぜ学生がそのような張番をしたかということを確かめたところが、それは今年の2月以後3月にかけて、特審局の名古屋支局の支局員と思われる特審局の役人から、学校の学生が手紙でスパイを頼まれて、そうしてスパイをしておった。この事情が、その学生が自供したために、自治会のある種の人に、学生の仲間にわかりました。そこで学校内において特審局のスパイが横行しているという事情がわかったので、学生は非常にいらいらしておりました。そこへ事件の起きる10日くらい前から、そこの住宅に住んでいるところの学校の職員のところに、どうも特審らしい者が連絡に来るといううわさがあったのであります。そのうわさがあったために学生は、それでは今晩はちゃんと張番をしてそれを見届けよう。いつもそれは夜の11時ごろ帰るといううわさですから、まず10時半からそこへ3人くらいの者が張った、こういうことです。ところが11時半くらいになっても、何も出て来ない。それでは帰ろうかと思つておるとき、まったく意外な方面から、住宅でないところの、ほかの馬場の方面から巡査が2名やって来た。こういうので、その衝突は両方とも非常に意外だったと思います。学生の張った事情は、そういうわけであります。

しかるに警察側は、その巡査が来たのは犯人を追行して入ったのだ、学生側はそんな犯人を追行して入ったものではない。それは現にぶつかった所は、学校の門から5町も離れた遠い所であります。その間にはいろいろな人もおりましたが、巡査が通行したことを認めた人がない。ちょうどその時刻はその門は相当往復があったわけです。それに夜間通行する唯一の門でありますから、非常に通行がはげしかった。ことに柔道部は合宿をして練習をしておりました。その結果、10時半まで柔道の練習をして、そうして着物を着かえて、北門を通って外のおふろに行く、こういう事態もあった。また学校の校庭には、2人くらいの女の人がおりまして、湯上りにそこで涼んで見ておった。その際庭を通行した人はない。学校の側においても、巡査が北門から入ったものではないと考えた。北門から入ったものでないとすれば、学校は全部垣根をもって囲まれている、またその他の門は夜は閉鎖して、巡視をして巡回させている場所でありますから、巡査は不法に侵入したものと認めざるを得ない。従ってこの点において警察は謝罪あるいは遺憾の意を表すべきものだ、ということを事件直後に申し込んでおるというような事態でありました。

しかるに検察庁がその点についてどういうふうに考えておるか、私どもわかりません。ただ衝突した状況、その衝突したというのは、11時半からして12時まで約30分、その間巡査がけがしたとか傷害ということはあっても、それはばんそうこうを3日くらい張ったくらいでなおっております。翌日の勤務にもさしつかえないような状態であります。大したことはない。そういうようなことも、しかし厳重な法規的な意味からいえば、犯罪になるでしょう。そういう点の調査に重点を置いておる。学校側は、むしろどこから入ったかということについて重点を置いてもらいたい、こう考えておるわけであります。その点に関する注意を検察庁に申し込んだこともあります。

その後検察庁の方においては、検証をしたいということでありますから、なるべく摩擦のないようにさせたいと思いまして、学生にも、裁判所の令状のもとにおいて検証するような場合においては、抵抗してはいかぬということをよく諭告しておきました。学生の方はその際には、無抵抗の抵抗である。その意味は、無抵抗というのは物理的には抵抗しない、しかしかくのごとき弾圧的なものに対しては、極力憎むのだ、精神的に抵抗するのだ、こういう意味において無抵抗の抵抗という言葉を使っているようでした。その検証も無事に済みましたし、またその次の逮捕の場合においても、700人ばかりの警官がまわりを囲んで、宿舎に入って来て逮捕したことはあるけれども、物理的な抵抗、そういうことを受けることなしに、無事に済みました。これは学校側としては、最初の晩すでに、国警も動員して、あそこは市警ですが、国警も動員して学校のまわりを囲み、学内においては歩哨を出すという非常に不穏な形勢でありましたが、私は12時ころ学校に行きまして、そういうことはいかぬ、手帳とピストルは返しなさいということを話して、午前3時ごろ警察署長に、ピストルと手帳はあした返させるからということを電話しておきました。その晩は両方とも興奮状態であって、そんなことを詳しく調べ上げる余裕はなかった。その後検察庁の方において逮捕状の執行がありまして、あとは勾留期間内にそれぞれ調査したと見えて、私はきのう参りましたのですがきのうそのうち5人か4人が起訴されたという話でした。大体の経過から行くと、こんな状態になっております。

その後、学校内及び学外にある先生の住宅を家宅捜索した事実があります。それはおとといでしたかと思います。これは学校内の住宅も学校外の住宅も、先生に対しては学校は住宅を与えておるのであって、学校が管理しておる寄宿舎とは違う。寄宿舎はわれわれがいつでも行って入ることができますが、学内の住宅でも、その人たちに貸してある住宅ですから、いずれもその人たちに捜査令状を提示して、適法に捜査したと思っております。その後のことはあまり聞きません。

私はこの事件に関して数点、大学と警察との衝突の問題として新しいケースがあるということを申し上げておきたい。その1つは、検察庁が犯罪捜査に関して協力を申し込まれたことがある。それに対して大学がどの程度に協力すべきかということは、問題であると思います。それに関しては正式に書面で返事しておりますから、十分教育界でその問題に関して批判をしていただくだろうと私は考えております。学校としては、あいつが怪しいだろう、これが怪しいだろうといって、学生の名前を指示したり、そういうことをすべきじゃない、確たる証拠もあるわけではないのに、検察庁や警察の手先ではないところの学校は、そういうことに対してどの程度に協力をすべきかということは、おのずから教育者の批判かあることと思っております。

第2の点は、東京においてしばしば学校と警察とが問題を起しておりますが、検察庁が進んで捜査の主体になって捜査しておることはないと思います。それは早稲田の事件でも、犯罪として捜査するならば、捜査できるはずです。そういうこともしていない。ただ、いなかにある大学のために、上部機構がはなはだ薄い。そういう結果、暫く冷却期間を置いて、だれか話してくれればいいということが、一つの考え方でもあったろうが、今度の場合は、検察庁が非常に大事件のように思って、捜査の主体になって捜査しておる。これは司法当局が、そういうような学校と警察の問題に対して、そういう態度をとることはどうであるかということも、1つの批判の対象になるのではないかと思っております。

第3点は、特審局がその学校の学生をスパイに使う。こういう問題は、学校の教育から見ると非常に困った問題です。学生に対してスパイをするようなことははずかしいことであるとわれわれは訓育しているのに、国費をもって誘惑してそういうものを出すようなことは、私は教育の立場にあるものとして非常に困っておる。のみならず、学校内において学生相互に非常に信頼心がなくなる、あれはスパイじゃないか、真実を語り、思うところを語って論議して、そして研究し合うというのが学園であります。しかるにその中においてスパイがある。ほんとうのことも語れない、こういうことをやろうということも言えない、こういう状態にさせられるということは、学校として特審局に対してはなはだ不満の意を表さなければならないというふうに思っております。この3つのことが、今度のケースにおいて各方面の批判を受けなければならない事案ではないか、こう考えております。



[320]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
さっき学問の自由で、教授がいかなる政党へ入っておろうが、学生がいかなる政党へ入っておろうが、またいかなる研究をしておろうが、学長としては容喙すべきところでないとおっしゃるこれは私はたいへんごもっともだと思いまするが、学問のために研究するということと、共産党員として活動するということとには、たいへんな差異があるのではないか、こう思います。

ことに今日の共産党はいかなる指令を出し、いかなる行動をしておるか、この点は御承知であろうと思いまするが、御承知かどうか。御承知であって、今の共産党の指令し、やりつつあることは危険なものでないとお思いになっておられるかどうか。日本の今日の現状において許すべきことだとお思いになっておるか、許すべからざることだとお思いになっておるか、この点をお聞きしたい。

[321]
証人(愛知大学学長) 本間喜一
私は共産党は、学生それから教授に対してどんな指令を出しているか、ちっとも知りません。また知る方法がない。もしおありになったら、ひとつぜひ見せていただきたい、そう私は思います。そういう参考資料があったら、早いところ各学校に資料を提供するのが、政治家あるいは行政に関係する者の任務ではないかと思っております。私は知りません。そうして共産党を合法の政党として認めている以上は、共産党によって活動するのは何も悪くないと私は思っております。

[322]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
それはどうもまことに遺憾ですが、球根栽培法というものが、アカハタの後刊紙として、名前は球根栽培だが、実際は暴力革命の指令書である。これは文部省であなた方の方へそういうものを見せなかったということは、私は非常に遺憾だと思うが、そこで中核自衛隊とは何ぞやというたら、暴力革命をやる中心活動体で、かようなものをやれと言っておる。

かようなものを現実に行えば、これは危険だとはお思いになりませんか。しかも暴力革命をやるときの非合法の手段をみな教えておるのです。御承知ないならばやむを得ない。もしそうであったら、あなたは危険でないとお思いになりますか。

[323]
証人(愛知大学学長) 本間喜一
私は球根栽培法というのは新聞で見ただけで、実物は見たことがないのです。もしおありだったらみな配布していただきたいと思いますが、見たことはないのです。これは実際見たことないからなんで、うそではありませんから……。

それから暴力革命を正当とするというようなことは、私は一つも見ておりませんし、また今でも決して賛成しているわけではない。だからおそらく見てそういうことが書いてあれば、こんなことはいかぬということは言えるでしょうけれども……。

[324]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
中核自衛隊というのは、暴力革命の第一線隊なんです。そして実行すべきことなんです。その実行はすべて非合法手段なんです。そして火炎びんを投げることから、敵の武器をとれとか、警官からピストルをとってこれでやれということがみな書いてある。これは間違いありません。

あなたはこれだけのことを聞けば、そういうことをやろうとすれば、学生及び教授の身分でやるとすれば、容赦のならぬこととお思いになりますか、それとも自由だからいいとお思いになりますか。

[325]
証人(愛知大学学長) 本間喜一
それは学生としてはいかぬと思います。それから教授としてもそういう暴力的なことをするというようなことは、もちろんいかぬことだと思います。

けれども私はそういうよう内容については、初めて聞いたことですから……。

[326]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
そこで、そこまでお思いになれば、あなたにひとつ特別懇意だから私は申し上げるのですが、あなたは先ほどから一党一派に入ったからといって悪いことはない。しかしそれが行動として悪いものに現われればとめるとおっしゃる。なるほどあなたの前へ現われればそれはおとめになりましょうが、あなたの知らぬ間にさようなことを計画しているとすれば、あなたはさしつかえないとおっしゃるが、はたから見ればすこぶる危険なものだと思うのです。この点はどうお思いになりますか。

[327]
証人(愛知大学学長) 本間喜一
それはそういうふうなことを準備しているとすれば、はなはだ危険だからそれはいかぬことだと思いますが、私どもから考えるならば、もし共産党がそんなことを指令し、やっているなら、なぜ議会において共産党を否認するような法案でもつくって、共産党否認の態度をとられないのか。われわれは法律のできるのを待って見ているんですから、ここでもってそれだけわかっているなら、共産党を認めなければいい。そういう共産党を認めておいて、党員が何かするというのを学校でばかりとめろと言ったって、それは無理な話で、むしろここでおとめになったらいいじゃないですか。

[328]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
立法上の問題はおっしゃる通りで……。

[329]
証人(愛知大学学長) 本間喜一
私は立法を見て、いろいろ考えてやっておるのです。

[330]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
破壊活動防止法というのは、大体そういう目的でやっております。ただ私が申し上げるのは、あなたの学校のことを申し上げるのです。あなたはそうおっしゃるが、あなたの学校には共産党の中核自衛隊の設立のある疑いが濃厚なんです。あなたはそれをどう思います。それを私は申し上げておるのです。

[331]
証人(愛知大学学長) 本間喜一
私は中核自衛隊が学校の中にあるなどとは思っておりません。そんなことを初めて聞いた。火炎びんなど見たこともない。それから何もそんなようなものを見たことがない。学校の中で火炎びんをこしらえておるとかいうことがあるなら、なるほどそうかと思いますけれども、自衛隊を認めるというのは、何を根拠としてそんなふうに言われるのですか。もし材料があるなら伺って、さっそく帰って調べてみますから……。

[332]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
私はこれ以上あなたと議論するつもりもないし、私はあなたのために申し上げるのです。これはあなたは私のところの学生は、純真なものであるから、そういうことはないのだ。共産党へ入ったってそういうことをしない。中核自衛隊も御承知ないというのであるから、ごもっともだと思うが、それでは日本の現実とあなたの目とはちょっと離れておる。これははなはだ言い過ぎかもしれませんが。もしそうだとすれば、これはあなたとして重大だ。しこうしてあなたのおっしゃるように、幸いにして、あなたの学校で現に疑われておることが、疑いだけで済めばまことにけっこうでありますが、現実に中核自衛隊が組織されておったということになれば、すこぶる重大なことでありますから、さっそく、さようなことがあるかないかお調べになって、もしあるとすれば、これに対しての対処、また今後起るようなことがあるなら、あなたとしての対処を希望して、私はこれ以上追究いたしません。

[333]
証人(愛知大学学長) 本間喜一
それは、もしそういうことがあったら、署長なり何なりが私に言ってくれればいい。ところがこの間の騒動の際に、寄宿舎に竹やりをうんと準備しているということを電話をかけて検察庁に知らせた人がある。それで私はさっそく調べたが、そんなものは全然なかった。だからもし火炎びんがあるとか何かあるというような例をあげて、署長なり検事正なり私に一言でも注意してくれれば、私みんな探します。