昭和28年03月05日 衆議院 地方行政委員会 国家地方警察本部長官 斎藤昇
「そこで日本共産党の軍事組織は、御承知のように軍事委員会によって統轄をされておるのでありますが、その組織の行動的部面を受持ちまするいわゆる中核自衛隊は、現在われわれのところにわかっておりますのは約600隊でありまして、隊員数が5500名でございます。われわれのわかっている資料によるものはさようであります。」

昭和28年09月09日 参議院 地方行政委員会 国家地方警察本部長官 斎藤昇
「只今私のほうで入手をしておりまする材料等から判断いたしまして、これらの中核自衛隊、或いは遊撃隊という大衆層組織の隊員は恐らくまあ8000から1万ぐらいであろうかと、私のほうでつかんでおりますものにつきましては、さように考えられるのであります。」

昭和27年02月15日 参議院 地方行政委員会

[011]
委員長 西郷吉之助
それでは予定では次に木村、大橋両国務大臣から治安機構改革その他一般治安問題について説明を求める予定でございまするが、まだ見えませんので、それをあとに廻しまして、斎籐国警長官より、先般発生しました北海道並びに長野県に起きました問題を中心といたしまして、一般治安状況について説明を求めます。

[012]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
いわゆる白鳥事件につきましては、只今鋭意捜査中でございまするが、この事件の発生は、今年の1月21日午後7時40分頃でありまして、その場所は札幌市の南六条西17丁目の道路上でございます。被害者は札幌市の中央警察署勤務の警備課長白鳥一雄であります。同人が自転車で帰宅の途中、只今申上げました場所に差しかかった際にあとから同じく自転車で追尾して来た何者かに突然拳銃で狙撃されまして、左胸部に盲貫銃創を負って現場で死亡をいたしたのでございます。中央警察署におきましては、事件発生に際しまして直ちに署員の非常招集を行いますると共に、国家地方警察の札幌方面本部に対しまして援助要請をいたしましたので、国警、自警合同の捜査本部を設けまして、以後鋭意捜査を進めて現在に至っておるのであります。

その経過の詳細につきましては只今捜査の過程にありまするので、具体的に申上げますることは差し控えたいと存じまするが、そして又この事件が共産党関係者が敢行した犯罪であるかどうかという点につきましても、只今予断を以て臨むことができないと考えておるのであります。併しながらこの事件後日本共産党札幌委員会の署名入で、この種の暴力行為を是認するような宣伝活動が行われておることは事実なのであります。その一例を挙げますと、御承知のように1月22日附に「見よ天誅遂に下る、自由の凶敵、白鳥市警課長の醜い末路こそ全ファシスト官憲共の落ゆく運命である。」云々というような表題の宣伝ビラを相当撒いたのでございます。その内容の一部を申上げますと「全警察官及その上級者と高田市長よ、諸君の生命とその家族の幸福のために今後一切の民主運動に対する弾圧を即時中止せよ。そして占領軍と反動政府の命令を拒否し日本人のために、市民のために良心ある役人となられよ。決して第二の白鳥となるような行為をするなかれ、白鳥課長のむごい末路を夢にも他人事と思うなかれ。1952年1月22日日本共産党札幌委員会」というような署名入のビラを相当撒いたのであります。

又事件発生前に、特に昨年12月27日の自由労働者の検挙事件の発生以来、被害者の自宅宛に107通の脅迫状が送達をされております。又12月30日には白鳥課長自宅玄関口の障子に封印をするように「家族を皆殺しにする」という旨の脅迫状が貼られた。その他自宅周囲には多数の脅迫文書が貼られておるのであります。この事前の脅迫状は被害者宛のもののほかに、高田札幌市長の自宅宛に60通、それから塩谷検事、これは札幌の地検の公安係の検事でありますが、自宅宛に90通出されておるのであります。

なお本件の捜査の過程におきまして、昨年12月19日発生の自由労働者の公務執行妨害並びに傷害事件の被疑者でありまする尾谷豊というのを2月4日札幌市におきまして又本事件発生後の先ほど申しましたアジ・ビラの配布者でありまする吉田哲、これも自由労働者でありますが、これも同じく札幌において暴力行為等処罰に関する法律並びに団体等規正令違反として2月8日検挙せられ取調中であるのであります。

このほかに事件発生後、北海道の検察官憲その他に対しまして相当数の脅迫状めいたものを発送をせられておるのであります。警察官17人、検事4人、その他の者7人に対して脅迫文書或いはビラというようなものが配布せられておるような状況であります。併しながらこういう脅迫状を受けた関係者は何ら意気沮喪することなく、極めて士気旺盛でありまする状況を、私が実際に出張して見て参って心強く思っているのであります。

先ほども申しましたごとく、この事件はまだ捜査の過程でありまするので、被疑者は果して何者であるか判明をいたしておりません。又捜査過程において浮かび上っております各種いろいろな線がございますけれども、これらは非常にデリケートな関係を持ちまするので、御質問によりましては差支えのない範囲で申上げることができるかと思いますけれども、できるだけ事件の捜査に直接関係いたしまするものは、御説明は差し控えさして頂きたいと思っておるのであります。

それから長野県下の田口村事件につきましては、これは2月3日の夜午後11時頃に南佐久地区署員4名が無灯火の自転車で通行中の1名を職務質問いたしましたところ、警察官に抵抗をいたしましたのでこれを逮捕したのでありまするが、その際に他の参集者等が警察官に対しまして集団暴行傷害を加えた事件であります。

本事件につきましては爾後捜査の結果、2月4日正午までに前述の1名の被疑者のほかに被疑者7名、うち4名は団体等規正令による届出のある日本共産党員でありまするが、これを逮捕いたしました。7名のうち2名は釈放をいたしておるのであります。この事件も捜査中でございまするが、当日これらの暴行を加えました被疑者等は、或る種の会合を開催をいたし、その帰り途に職務質問を受けて、かような暴行を働いたものと考えておるのであります。

国内における共産主義運動関係者が武力革命の問題を、本格的な実践課題として取上げたように考えられますのは、おおむね一昨年、即ち昭和25年の秋以来のことであります。

それは昨年12月14日、共産党中央機関紙「アカハタ」の同類紙と認定の上発行停止処分を受けました「内外評論」の第4号、これは1950年の10月12日附でありますが、「共産主義者と愛国者の新しい任務」の内容からも推定することができると考えるのであります。

その後この方向への準備工作は、非合法のうちに逐次進められつつあるものと考えられます。

例えば重要工場、事業場、占領軍の基地、電気、通信、運輸の諸施設に対する調査活動、非合法的なゲリラ集会、各種のアジ・プロ活動、中核自衛隊の結成等の情報乃至は捜査資料としてこれらが現われておるのであります。又この種の武装闘争に対する基本的な非合法資料といたしまして「内外評論」第15号、1951年の3月15日附でありますが、「内外評論」15号の「軍事方針について」及び「球根栽培法」第31号、1951年の11月15日附「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」など、これらも共産主義運動関係者に対する家宅捜索等から発見されておるのであります。

最近の傾向といたしまして注意しなければならないと考えまする点は、一つはいわゆる民族解放、民主統一戦線工作が労農、市民、青年、学生、文化運動等、政治、経済、社会運動の全面に亘りまして、いよいよ本格的且つ具体的に実践されようとしておる点でありまするが、それと共に他面には警察その他治安担当機関に対する牽制的な意味での実力行使がいよいよ積極且つ露骨に現われつつある点でございます。

前者につきましては「球根栽培法」第33号、これは1951年12月20日附になっておりまするが、それの「当面の戦術と組織問題について」及び同第34号、これは1月8日附、「全国組織会議の決定を実行するために」等の内容につきましてもよく窺い知ることができるのでありまするが、いわゆる抵抗自衛闘争の大衆組織を結成強化いたしまして各種運動のヘゲモニーを社会民主主義系の指導者から奪取しつつ、吉田内閣の打倒を通じて占領制度の撤廃、革命の実現を図らんとする戦術、工作が極めて詳細且つ具体的に組織の内部で討議されつつあるように見受けらつれるのであります。

対警察工作につきましては、「球根栽培法」の第32号、「警察工作立遅れを克服するために」という内容によりましても、従来の守勢の域を脱しまして、攻勢に転じつつあるもののように見受けられるのであります。葉書、ビラ、投石などを以ていたしまする恫喝乃至脅迫的な機構は、本年1月以来続発いたしつつあるように見受けられるのであります。昨年1年間における全国の警察官に対するこの種の脅迫的事犯は、これは昨年でありまするが、国警本部に報告のありました分、東京警視庁の分は不明でありますが、それを除きましても381件でございます。うち自治体警察に関するものが277件ということに相成っておるのであります。

これらの傾向は、取締機関たる警察の構成員を各個撃破しつつ内部動揺を招来せしめ、警察の独自の強味である第一線組織を、麻痺させ、そうしてこの種の取締に打撃を与えようとするものであろうと考えられる点は明瞭に看取できるのであります。併し先ほども申上げまする通り、これらによって取締官憲が或いは牽制をされたり、意気を沮喪したり、そういうような傾向は全然見受けられない点は心強い次第だと考えておるのであります。以上漠といたしておりますが、最近の治安の情勢を併わせまして両事件の報告を終りたいと思います。御質問ございますれば……。

[013]
委員長 西郷吉之助
ちょっと申上げておきますが、本日の理事会で今日は説明を全部終りましてから、時間があったら今日御質問をいたしますが、時間がなければ月曜から質問をすることにいたします。次に吉河審査局長から一般治安問題について説明を聴取いたします。

[014]
政府委員(法務府特別審査局長) 吉河光貞
御指名によりまして、簡単に御説明申上げます。只今斎藤国警長官から、詳細に治安の状況について御説明がございましたので、私といたしましては、すでに附け加えて申上げるような格別顕著なものはないのでございまするが、なお簡単に申上げることにいたします。

現下の我が国内における治安の状況は皆様御承知の通り全体としては一応平静に維持されておると存ずるのでありまするが、その裏面におきまして一部国民の間にはいろいろな不安、動揺が見受けられると共に、最近極く少数の破壊分子の間におきまして日本国憲法並びにその下に成立した政府を、武装反乱或いは武力闘争によつて破壊顛覆するということを主張したような印刷物を広汎に発行、配布しておるというような事実があったのであります。で、今斎藤国警長官からも御説明がありましたように、昨年11月14日発刊停止処分に付しました日本共産党の機関紙「アカハタ」の同類誌「内外評論」などはその一例であります。

又一部過激分子の間におきましては、口に平和と自由を唱えながら、その半面国民の権利と自由を濫用いたしまして、ややもすれば公共の安全保持に当る警察職員等に対しましても、暴行脅迫に出でるというような不祥事件が各地に起きておるのであります。

講和条約発効後において、内外情勢の推移によりましては極めて重大なる事態の発生もその可能性が予想されるような状態でございます。かような武装反乱によって、日本国憲法並びにその下に成立した政府を顛覆、破壊するというような主張が現実の問題として取上げられましたのは、斎藤国警長官からも御説明がありました通り、一昨年9月頃からであります。

非合法機関紙として発行配布されております「平和と独立」の一昨年9月30日附には「高まる波の権力獲得の革命闘争へ」と題しまして、只今申上げたような破壊的な記事が出ております。次に同年10月7日附には、「暴力には力でたたかえ、共産主義者と愛国者の新らしい任務」というような記事が、同じような趣旨で出ております。次に同年10月14日附には「権力奪取への労働者の課題、農民の闘争を組織し指導せよ」。次に同年11月4日附には「権力獲得の武力革命のために党をボルシエヴイキ化せよ」というような記事が出ております。次に同年11月11日附には「権力獲得のための革命的指導を」、次に同年12月2日附には「権力獲得への計画的指導」、同じく同年12月9日附には「祖国日本を世界の放火とアジア侵略の足場にするな」というような題で同趣旨の記事が出ております。更に同年12月23日附には「独立と平和のため朝鮮における帝国主義者の侵略を失敗させよ、実力闘争は人民の自由と統一を拡大する手段である、武力革命と機械的に同一視するな」というような記事が出ておるのであります。

更に只今斎藤国警長官からもお話がございましたが、「内外評論」という秘密出版物には、一昨年9月27日、「日本における米帝国主義の農村支配と農民の革命闘争」、同年10月12日の特別号には「共産主義者と愛国者の新らしい任務、力には力を以てたたかえ」、同年11月7日附には、「なぜ武力革命は問題にならなかったか」、次に同年10月26日及び11月7日附には「ゲリラ基地の確立について」、それから同年11月22日附には「工場自衛団、町村人民自衛団をつくれ」、同年12月20日附には「革命の思想的強化と正しい闘争路線」、次に昨年4月5日附には「自己批判」と題しまして同じく同趣旨の記事が掲載されておるのであります。

特に只今斎藤国警長官からもお話がございましたが、我々は「武装の準備と行動を開始しなければならない」というような「内外評論」の記事に引続きまして、極く最近には「中核自衛隊の組織と戦術」と題しました非合法文書が配布されつつあるような状況でありましてこの文書の内容を検討いたしますと、中核自衛隊は小隊、中隊、大隊のような組織を持つというような組織の方針などが述べられております。極めて破壊的な文書であります。

私どもといたしましては、かような一部破壊的な分子の宣伝、煽動の活動の実態につきまして目下調査中でございます。又かような宣伝、煽動に照応いたしまして、具体的な組織活動乃至さような動向の有無につきましても同じく調査を続行しておるような次第でございます。

極く簡単に申上げました。